ELECTORICAL EDITED TEXT OF "『清風柱礎』（富田寛　SC000）" by CHARLIE ZHANG 2017 ver.0.02


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SC002　緊板

　中国音楽で，比較的早いテンポで演奏される曲を「快板」と言い，その異名の一つとして「緊板」という語がある。ちなみに遅いものは「漫板」と言う。
　芝居音楽など言うところの「板式」という拍子の種類の一つ。本来は特定の曲名というより，連続する曲の流れの中で指示される音楽用語で，西洋の Allegro に対応するものだが，その拍子で演奏される曲のなかから特徴的なものをとりだし，独立した曲として「○○快板」「××緊板」と名付けられることもある。これも本来は何らかの長曲の一部をなすものであった可能性が高い。
　早大所蔵・頴川連『西秦楽意譜』第三巻に同題の曲譜が収録されており，譜の符字順列も一致する。頴川連は流祖・鏑木渓菴の師とされる人物であるから，『清楽指南』などはこれを「新曲」の部類に入れているが，ともすると渓派にもともと伝わっていたものかもしれない。　長崎派・柴崎梅軒『明清楽譜』の「二凡」と題された長曲で曲尾に「緊板」と題される一節が見え，また長崎歴文の中村文庫１８：５７『西奏楽意譜』では「女緊板」と題される曲があり「女ケンバン」と読みがふられているが，いづれも譜の内容は一致しない。

　１７Ｇ，１・２行目に付線による３連符が２箇所あるが，どちらも３コ目の符が長音であることから読み解き上の支障はなく，厳密には長音につながる２つめの「−」は，あまり意味がなく，不要である。１符めに対し２符めが短い不均等の関係である可能性もあるが，他の例から察しておそらくありえない。
　いづれの資料も書入れは付点のみで装飾音の追加等はない。３１Ｂの書入れは頭点のみ，点の位置は変わらないため，読み解き上の相違はないものと考えられる。出だしの「尺−尺」のみ違っているが，おそらくは付点の誤りであろう。
　１７Ｇ，１７Ｙの付点から推測される，渓派における標準的な曲調は以下の通り----

　　尺−尺六｜工−−−｜工−工六｜尺−−○｜
　　上−尺工｜上−尺−｜−○尺−｜尺−工六｜
　　尺工上−｜尺工四仩｜合−−○｜合−−四｜
　　合−−○｜工−尺−｜工−尺−｜尺−−六｜
　　工−六−｜六−−○｜四−上−｜上−工−｜
　　尺−−○｜尺−−上｜四−−−｜四−上−｜
　　尺工上−｜尺−−○｜工合工上｜尺−−○｜　　■再現曲


　『清楽指南』では目次に曲名はあるが曲譜は収録されていない。『清楽独稽古』（HG017　M.27）にも曲譜が見え，再現される基本的な曲調にさほどの相違はないが，１３符めの「尺」が４分＋休符となっているため，以降の拍子が半小節づつズレている。（再現曲では２行２小節目，尺のつぎには休符のかわりに装飾音「合」が入っている）

　　尺上尺六五｜工−−−｜工工工六仩｜尺−−○｜
　　上合尺工｜上−尺合｜尺−尺六五｜工六仩尺工｜
　　上−尺工｜四仩伬合−｜−○合−｜−四合−｜
　　−合合工−｜尺上尺工六｜尺−尺−｜−六工上尺｜
　　六−六−｜−○四仩｜上尺工上合上｜工−尺−｜
　　−○尺工｜尺上四−｜−−四伬｜上上尺尺工｜
　　上合尺−｜−○工合｜工上尺−｜−○　　｜　　■再現曲

　『清風柱礎』の版にくらべると，装飾符によって若干華やかさが強調されている。

SC002　緊板 尺尺六工工工六尺上尺工上尺尺尺工六尺工上尺工四Ｃ合合四合工尺工尺尺六工六六四上上工尺尺上四四上尺工上尺工合工上尺
尺 尺 六 工 工 工 六 尺。上 尺
工 上 尺。尺 尺 工 六 尺 工 上
尺 工 四 Ｃ 合。合 四 合。工 尺
工 尺 尺 六 工 六 六。四 上 上
工 尺。尺 上 四 四 上 尺 工 上
尺。工 合 工 上 尺。
 尺−尺六｜工−−−｜工−工六｜尺−−○｜
上−尺工｜上−尺−｜−○尺−｜尺−工六｜
尺工上−｜尺工四Ｃ｜合−−○｜合−−四｜
合−−○｜工−尺−｜工−尺−｜尺−−六｜
工−六−｜六−−○｜四−上−｜上−工−｜
尺−−○｜尺−−上｜四−−−｜四−上−｜
尺工上−｜尺−−○｜工合工上｜尺−−○｜
d2 dg ｜e2＆e2 ｜e2 eg ｜d2.r4 ｜
c2 de ｜c2 d2＆ ｜dr4 d2 ｜d2 eg ｜
de c2 ｜de ＜a＞c｜＜g2.＞r4 ｜＜g2.a＞ ｜
＜g2.＞r4 ｜e2 d2 ｜e2 d2 ｜d2.g ｜
e2 g2 ｜g2.r4 ｜＜a2＞ c2 ｜c2 e2 ｜
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de c2 ｜d2.r4 ｜eg ec ｜d2.r4 ｜


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